東京都選挙管理委員/月額報酬差止め事件
     高裁-控訴理由書


 ※
控訴理由書は,控訴してから50日以内に準備書面として提出することになっています。
  以下、行革110番が提出した「控訴理由書」です。
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平成21年(行コ)第339号 報酬支出差止請求事件
 控訴人  後藤雄一
 被控訴人 東京都知事
          平成22年12月1日
 控訴人 後藤雄一

 東京高等裁判所民事11部係御中

  高裁準備書面(1)
 控訴理由を述べる。

  本件地裁判決は、現状を大きく見誤り、地方自治の本旨からかけ離れ、また、
 本件同様の滋賀県選管委員の大阪高裁判決と相反する結論を導きだしており、
 取り消しを求める。以下理由を述べる。

第1.「判決28ページ 18行目〜」について。
 1. 「・・・、同規程においては、非常勤の職員に対する報酬の支給につき
   その勤務日数に応じてする方法以外の方法によることが出来る
   基準が示されていないこと、同規程の制定に際して国会での審議において、
   その適用がある場合を一定のものに限ることや当分の間の取扱いとして
   定めることが前提とされていたとはうかがわれないこと等からすれば、
   上記の但書きの規程の適用される場合等に関する上記原告の主張は
   採用し難いものというべきであり、・・・」
  と判示する。
 2. 上記アンダーライン(控訴人が引いた)の「基準が示されていない」
  「うかがわれないこと」と判示するが、本件は選挙管理委員等の行政委員の
   報酬に関することである。
 3. 当然、「基準」が示されていなくても、地方自治法の本旨に立ち返って
  考えなければならない。
  まして、
  「その適用がある場合を一定のものに限ることや当分の間の取扱いとして
  定めることが前提とされていたとはうかがわれないこと等からすれば」
  等と判示することは、地方自治の本旨を逸脱した判断である。
 4. 地方自治法は、地方自治、つまり、「税金」によって住民福祉を行なう法律、
  地方自治を社会の常識的な考えで決めた法律であり、基準が示されていなければ、
  地方自治法の本旨に戻るべきである。

第2.「判決30ページ 12行目〜」について。
 1. 「このような本件各委員の職務の内容や勤務の態様等を考慮すると、
   本件各委員に対する報酬について、単に会議に出席する等した日数に
   応じて支給するといった方法によることが常に必ず具体的実情に
   沿うものとまでは断じ難く、上記の日数によって一律には
   評価し尽くせない事由があるとしても、東京都議会において、
   月額をもって定めた報酬を支給するものとしたとしても、そのような
   判断をもって裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものである
   とまで直ちには認め難い。」
  と判示する。
 2. しかし、原判決は、選管委員の現状を把握せず、本件同様の滋賀県選管委員の
  大阪高裁判決と相反する結論を導きだしている。
  (1)職務の内容
   1)選管委員の職務内容は法定されており、委員に任命される者の資質に着目
    し、これを生かして行政権を担うことが期待され非常勤で行なうことが
    可能である。
   2)そもそも、選管委員等の非常勤報酬は「その学識や経験を職務」に生かし
    てもらうことに対する謝金の性格を有するものである。
   3)よって、その勤務の質及び量に相応する報酬を支給する必要はあるが、そ
    の職責の重大さを強調して、勤務量等の実情を度外視して月額報酬制を
    とることは、法203条の2第2項の趣旨を逸脱している。
  (2)勤務の態様
   1) 甲3〜甲6号証、甲9号証、乙11号証、及び、乙11号証を表にした原
     告準備書面(2)別紙より、本件選管委員の勤務は「毎月2回の定例会。選挙
     が行なわれる時等には臨時会、選挙啓発活動、そして、委員長は関連団体
     への会合へ出席」がある。
   2) 乙11号証の都選管係長の陳述書からも、選挙がない時は月2回の定例会
     だけ、というケースがほとんどであることが分かる。
     原告準備書面(第2)別紙の表を参照して下さい。
   3) 選挙がなく定例会しか行なわれなかった平成21年5月、10月は、2回の
     出席で委員長は532,000円、各委員は435,000円を得ていた。
     つまり、月2日出勤なので1日当たりにすると、以下の通り、委員長は
     266,000円、委員は217,500円となり、国の報酬限度額と比べると委員
     長は7.54倍、各委員は6.16倍となる。
     同様に、月3日出勤は5.02倍、4.11倍。月5日出勤でも、3.01倍、2.16倍。
     月9日出勤でも1.67倍、1.37倍となっている。
    
  4) 滋賀県選管委員の大阪高裁判決は、滋賀県選管委員の出席日数の平均を割り出し、
    国の報酬限度額(1日/35,300円)の比が「委員が3.02倍で違法」、
    「委員長の1.36倍を裁量の逸脱とまでいえない」
    と判示している。
    (滋賀県選管委員の報酬(委員長226,000円、委員202,000円である。)
  5) そこで、都選管係長の陳述書から平成21年4月〜12月の9ヶ月の出勤日数を
    平均すると以下の通り、委員長が3.89日、委員が3.11日〜3.33日である。
  6) この9ヶ月には、都議選(7月)、衆議院選(8月)が行なわれた月を含んでおり、
    勤務量が一番多い年であること推測できる。

   

  7) 仮に、違法の基準を滋賀県高裁判決の3.02倍とすると、本件都選管委員
    の勤務量の多かったは、平成21年4月〜12月の出勤日数の平均は委員長・
    委員とも4日以内であり、1日当たりの報酬額を国の報酬限度額と比して、
    委員長は3.77倍、委員は3.08倍と滋賀県高裁判決を大幅に上回っている。
  8) 上記のように、本件東京都選管委員は、都道府県と比べても突出しており、
    原判決は認められない。

第3.「判決30ページ 18行目〜」について。
 1. 「・・・、本件各委員に支給される本件報酬の額については、
   東京都特別報酬審議会が消費者物価(東京都区部)等を考慮した上で
   答申したところにより決定された特別職の報酬の額の改定率を参考にして
   定められているものであり、本件各委員の職務の内容や勤務の態様、
   東京都の規模のほか、平成22年4月1日以降の本件報酬の額が、
   委員長につき53万円、その他の委員につき43万3000円であり、
   上記の審議会の答申における平成21年度の東京都議会議員の報酬の額の
   1ヶ月当たり103万3000円と比較して、委員長がその約2分の1、
   その他の委員が更にその5分の4程度であることを勘案すると、
   本件報酬の額が著しく高額なものであるとまでは言い難い」
  と判示する。
 2. 原判決は、上記の通り「非常勤の委員報酬が都議会議員と連動する」ものを
   是としている。
   そして、本件委員長の報酬が都議報酬の約2分の1、委員がその5分の4であり、
   著しく高額でない、と判示している。
 3. 控訴人が各県の「選管委員の報酬」と「県議の報酬」を一覧表(別紙)を作成し比較した。
   すると、別紙()の通り、本件東京都選管委員の報酬は、都議の報酬の42%で最高額である。
   そして、30%台が神奈川(34%)、愛知県(33%),大阪府と兵庫県(31%)、
   北海道30%)。多くは20%台だが、10%台が高知県(15%)、鳥取県(16%)、
   岡山県(18%),山梨県と佐賀県と福井県(19%)という数字になった。
   
    
 4 よって、原判決の「東京都議会議員の報酬の額の1ヶ月当たり103万3000円と比較して、
   委員長がその約2分の1、その他の委員が更にその5分の4程度であることを勘案すると、
   本件報酬の額が著しく高額なものであるとまでは言い難い」との判示は、事実を把握せず、
   とんでもない間違であることが分かる。
 5. また、非常勤職員の報酬について原判決は27ページ22行目に
  「上記の本文の規定は、当該職員の非常勤という地位に照らし、これに対する報酬はいわゆる
   生活給としての要素を含まない性格であること等を反映するものであると解される。」
  と判示している。
 6. にも係らず、東京都報酬員議会では、
  「消費者物価(東京都区部)等を考慮した上で答申したところ・・」
   という。
 7. 「生活給としての要素を含まない」と判示しながら、消費者物価を考慮している
   報酬審議会の答申を絡めて判示する原判決は矛盾だらけで容認できない。
 8. また、原判決では「東京都の規模のほか」と『自治体の規模』を考慮している。
 9. 自治体の規模とは、
   面積規模か? 人口か? 財政規模か? その他? 
   であるか明らかでないが、選管委員の職務内容は法定されており、
   委員に任命される者の資質に着目し、これを生かして行政権を担うことが期待され、
   そもそも、選管委員等の非常勤報酬は「その学識や経験を職務」に生かしてもらうことに
   対する謝金の性格を有するものである。
 10. よって、その勤務の質及び量に相応する報酬を支給する必要はあるが、
   自治体の面積・人口・財政規模を強調して、勤務量等の実情を度外視して
   月額報酬制をとることは、法203条の2第2項の趣旨を逸脱している。

第4.「判決31ページ 17行目〜」について。
 1. 「また、本件各委員の職務に係る具体的実情に応じ、どの程度の報酬の額が
   適切であるかについては、東京都議会の判断の委ねられているのであって、
   規模その他の事情において大きな相違があるものと推認される東京都内の区市町村の
   選挙管理委員又は他の道府県の選挙管理委員の報酬の額や、国の非常勤の職員の報酬の
   額との比較をもって、直ちに著しく高額であるとまで断ずることは出来ない。」
  と判示する。
 2. まず、
  「規模その他の事情において大きな相違があるものと推認される東京都内の区市町村・・
   又は他の道府県の選挙管理委員の報酬の額や、国の非常勤の職員の報酬の額との比較をもって、
   直ちに著しく高額であるとまで断ずることは出来ない」
  と判示するが、
   「大きな相違があるものと推認される」
   とはどのようなものであるか判示していない。
 3. 選挙管理委員の職務内容は法定されており、他の自治体でも同様である。
 4. まして、都道府県では同様である。
 5. 強いて違うと言えば、「人口・面積」であろう。
 6. にも係らず、本件東京都選挙管理委員は委員長532.000円、各委員は435,000円と
   他の道府県と比べても突出している。
 7. また、国の非常勤委員の報酬限度額と比べても、6倍(月/2日)という数字が出ている。
 8. よって、原判決は取り消されなければならない。